食卓で、手作りの段ボール箱に白い紙を出し入れする女の子と、隣で微笑む大人の女性

子どものご褒美は逆効果?おすすめの選び方と切り替えのコツ

  • 対象:2〜10歳ごろ
  • 参考文献:3件
  • 読み終わるまで:約10分

「勉強を頑張ったらご褒美、が当たり前になっていて不安…」「そもそも、子どもにご褒美ってあげていいの?」。ご褒美のあげ方は、子育てのなかでもかなり悩ましいテーマのひとつですよね。

ご褒美には、本当にいろいろな考え方があります。なので今回は「何をご褒美にするか」という1つの視点にしぼって、僕がおすすめしている考え方と、今のご褒美を切り替えるときのコツ、そしてご褒美を考えるうえで絶対に忘れたくないことをまとめてみました。

この記事でわかること

  • ご褒美が「逆効果」になりやすいのはどんなときか(研究から)
  • 僕がおすすめしている「今、当たり前にしていることをご褒美にする」考え方
  • おもちゃなどのご褒美から切り替えるときの3つのコツ
  • ご褒美の中身よりも大切な「約束を守る」という視点
もくじ
  1. ご褒美は「あげる・あげない」より「何を・どうあげるか」
  2. ご褒美は逆効果?研究でわかっていること
  3. おすすめは「今、当たり前にしていること」をご褒美に
  4. その前に考えたい、ご褒美がなくても頑張れる工夫
  5. 今のご褒美を切り替える3つのコツ
  6. いちばん大切なのは、約束したご褒美を守ること
  7. まとめ
  8. よくある質問

ご褒美は「あげる・あげない」より「何を・どうあげるか」

最初に前提としてお伝えしておきたいのは、ご褒美が子どもにとっていいものか、あまりよくないものかは、1つの視点だけでは語れないということです。

子どもにどんな影響があるかは、いくつもの要素が絡み合って変わっていきます。たとえば、次のようなことです。

  • お子さんの年齢
  • 何に対するご褒美なのか(勉強、お手伝い、習い事の練習など)
  • どんなものをご褒美にするのか
  • どのくらいの頻度であげるのか
  • どんなあげ方をするのか

同じ「おもちゃを買ってあげる」でも、年に一度の特別なお祝いなのか、毎日の勉強のたびに約束しているのかで、子どもの受け取り方はまったく違いますよね。

なので、「ご褒美は絶対にダメ」「どんどんあげたほうがいい」と白黒をつけるのではなく、この記事では特に「どんなものをご褒美にするか」という点について、僕の考えをお話ししていきます。

TERU

僕が一緒にお仕事をしている方のなかにも、子どもの頃のご褒美が、勉強を頑張るうえで大きな支えになったと話す方がいます。

ご褒美って、本当に一概に「いい・悪い」とは言えないと思います。

ご褒美は逆効果?研究でわかっていること

「ご褒美をあげると、かえってやる気がなくなる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは心理学で「アンダーマイニング効果」と呼ばれています。むずかしく聞こえますが、もともと楽しんでやっていたことに、あとからご褒美の約束がつくと、ご褒美がないときには、自分からやる量が減ってしまうことがある、という現象です。

よく知られているのが、スタンフォード大学のレッパー博士らが、保育園の子どもたちを対象に行った実験です。

研究でわかっていること

レッパー博士らは、もともとお絵かきが好きな保育園の子どもたちを、「絵を描いたら賞状がもらえると約束されるグループ」「約束はないけれど、描き終わったあとに思いがけず賞状をもらえるグループ」「賞状がないグループ」に分けました。

1〜2週間後、ふだんの自由遊びの時間に様子を見ると、賞状を約束されていたグループの子どもは、ほかのグループよりお絵かきをする時間が短くなっていました。思いがけず賞状をもらったグループでは、こうした変化は見られませんでした。

対象:保育園に通う幼児1973年発表論文(Journal of Personality and Social Psychology)

その後、ご褒美とやる気の関係を調べた実験128件をまとめて分析した研究でも、「やると先に約束された物のご褒美」は、もともとおもしろいと感じていた活動を、自分から進んでやる気持ちを下げやすいことが確かめられています。

研究でわかっていること

デシ博士らは、ご褒美とやる気の関係を調べた128件の実験をまとめて分析しました。

その結果、「やったらもらえる」と先に約束された物のご褒美は、ご褒美がなくなったあとに自分からその活動を選ぶ時間を減らしていました。一方で、思いがけずもらえたご褒美では、こうした影響は見られませんでした。また、物のご褒美による悪い影響は、大学生より子どものほうが大きいことも報告されています。

対象:128件の実験の分析1999年発表論文(Psychological Bulletin)

もうひとつ、3歳の子どもを対象にした研究もご紹介しておきます。ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームは、3歳の子ども96人を対象に、人形と一緒に遊んで手に入れたおはじきなどを、人形に分けてあげる場面を調べました。分けてあげたときにプレゼントをもらった子は、言葉で褒められた子や、特に何も言われなかった子に比べて、その後ご褒美がないときに分けてあげることが全体として少なくなっていました。

ここで大切なのは、これらの研究が「もともと楽しんでいること・自分からしていること」に、先にご褒美の約束をつけた場合の結果だということです。ご褒美がすべて逆効果になる、という意味ではありません。

とはいえ、今すでに「勉強したらご褒美」が習慣になっているご家庭からすると、ドキッとする話かもしれません。ご褒美と子どものやる気の関係は、習い事や勉強が続かない理由をまとめた記事でもくわしく紹介しています。

おすすめは「今、当たり前にしていること」をご褒美に

では、どんなものをご褒美にするといいのか。ここからは研究で確かめられた方法ではなく、僕が子どもたちと関わってきたなかで考えている方法です。僕の結論は、「今、子どもが当たり前にしていることをご褒美にする」です。

お子さんが勉強を頑張るためのご褒美と聞いて、何が浮かぶでしょうか。おもちゃを買ってあげること、新しいゲームを買ってあげること、いろいろなものが浮かぶと思います。もし今あげているご褒美に不安があるなら、「今、子どもが当たり前にしていることをご褒美にできないかな?」と一度考えてみてください。

お子さんとの1日を振り返ってみると、毎日楽しそうにやっていること、好きなこと、楽しみにしていることがあるはずです。

  • 寝る前に絵本を読んでもらうこと
  • 1日30分のゲームやYouTube
  • 好きな漫画を読むこと

こうしたことは、ご褒美にしなくても、すでに毎日やっていることですよね。これからも毎日やっていくであろうことを、ご褒美にしてしまう。これが今回ご提案したいことです。

ソファで、男の子と一緒に絵本を読む大人の男性
毎日の読み聞かせのように、子どもがもう楽しみにしていることも、ご褒美の候補になります

いつもの楽しみを少しだけ特別にする形なら、「頑張るたびに新しいおもちゃを買う」といった、毎回が特別な出来事になるご褒美から抜け出すきっかけにもなるかもしれません。

お菓子・ジュースはご褒美にしない

毎日の楽しみのなかには、おやつが入っているお子さんも多いと思います。ただ、このブログでは、お菓子やジュースをご褒美にすることはおすすめしていません。絵本や遊びの時間など、食べ物以外の楽しみから選んであげてください。

その前に考えたい、ご褒美がなくても頑張れる工夫

このご褒美の選び方には、1つだけ大切な前提があります。それは、勉強などは基本的に、ご褒美がなくてもできるのがいちばんだということです。

理想は、次の2つのどちらかだと僕は考えています。

  • 学ぶ楽しさを感じているご褒美があるからやるのではなく、勉強そのものを楽しいと感じて、自分から進んで取り組める状態です
  • 勉強が習慣になっている親が環境を整えて、勉強することが歯みがきのように当たり前になっている状態です

あくまで理想なので、毎日そうはいかないのが現実ですよね。それでも、僕たち大人がまず理想をあきらめないことは大事だと思っています。

まずは「この子が学びを楽しいと感じるには、どんなサポートができるかな?」「自分から進んでできるようになるには、どんな環境を作ればいいかな?」と考えてみてください。たとえば、こんな工夫があります。

  1. 工夫1遊びながら勉強の要素に触れる

    勉強の本質を好きになってもらうために、日常の遊びのなかで文字や数に触れる機会を作ります。机に向かう前に「おもしろい」と感じられる経験があると、勉強に入りやすくなることがあります。

  2. 工夫2競争で燃える子には、いい意味での競争を

    競争が好きなタイプの子なら、周りといい意味で競い合える環境を用意してあげると、「頑張ろう」と思えることがあります。

  3. 工夫3慎重な子には、小さな階段を用意する

    慎重なタイプの子には、その子のレベルに合わせて小さなステップを作り、「できた!」という楽しさを感じられるようにします。

このように、まずはその子に合ったやる気のサポートを考えてみる。そのうえで、「もうご褒美しか思いつかない」「すでにご褒美が習慣になっていて不安」という方に、今回のご褒美の選び方を参考にしてもらえたらと思っています。

この順番が逆になって、本当はご褒美がいらない子に余計なご褒美の仕組みを入れてしまうと、せっかくの今のやる気を下げてしまうことがあります。前の章の研究ともつながる話ですね。子どもが自分ごととして取り組むきっかけについては、やるべきことをやらない子が自分ごとになる6つのきっかけもあわせてどうぞ。

今のご褒美を切り替える3つのコツ

「当たり前にしていることをご褒美に」と言われても、いちばんのネックになるのは「今のご褒美からどうやって切り替えるか」だと思います。

たとえば今、「勉強を○日続けたらおもちゃを買ってあげる」というご褒美になっているなら、そこから切り替えるのは本当にむずかしいですよね。正直、僕にも明確な答えはありません。それでも、知恵をしぼって考えたコツを3つご紹介します。

  1. コツ1いつもの楽しみが、少し増える工夫をする

    当たり前にしていることでも、少しうれしさが増すようにしてあげます。

    • いつも1日3冊と決まっている絵本の読み聞かせを、「3冊+好きな1冊を選べる」にする
    • 毎日30分のゲームを、「10日続けて勉強できたら、1日だけ1時間やっていい」にする

    おもちゃを買ってもらえるのは、子どもにとってとても大きなことです。それを切り替えるには、「今までの楽しみが増えた!」と感じられる工夫が必要だと僕は感じています。もちろん、何もしなくてもスッと切り替えられるなら、それに越したことはありません。

  2. コツ2誕生日などの区切りを使う

    子どもが納得して切り替えるには、タイミングも大切です。僕がいつもおすすめしているのは、誕生日、新年、進級などの時期です。

    成長や新しい1年の始まりを感じられるタイミングは、「これからは○○だから」と理由をつけやすいんです。

    大人6歳のお誕生日おめでとう!6歳になったから、これからはご褒美のルールも少し変えてみようと思うんだ。

    子どもどう変わるの?

    大人10日続けて頑張れたら、絵本をいつもより1冊多く選べるようにしようと思うんだけど、どうかな?

    区切りを利用するようで、親としては少しモヤッとするかもしれません。でも、子どもの側から見ても、何の理由もなく変えられるより、成長の節目に「これからはこうしよう」と伝えてもらうほうが受け止めやすいのではないかと僕は思っています。

  3. コツ3「くじ引き」で楽しみを選ぶ

    当たり前にしている楽しみを全部ご褒美の候補にして、くじ引きにする方法もあります。たとえば「1週間続けて、やるべき勉強を終わらせられたらくじが引ける」というルールにします。

    • 今日は絵本を10冊まで読んであげる券
    • 今日は1時間ゲームやYouTubeができる券

    このように、ふだん楽しみにしていることを、いつもより多くできる券を用意しておきます。この仕組みがお子さんにハマれば、とても楽しいやる気のきっかけになるかもしれません。

    どうしても「何かを買ってもらう」ことが必要なお子さんなら、くじのなかに1枚だけ「おもちゃを買える券」を入れておいてもいいと思います。毎回おもちゃを買ってもらうより、くじで当たるかどうかわからないほうが、まだいいですよね。子どもからすると「ご褒美が増えた!」と感じられるかもしれません。

    小さく折った紙は、口に入れてしまう年齢のお子さんなら、大人が見ているところで引くようにしてください。

TERU

ここでご紹介したのは、あくまでヒントです。全部をやる必要はまったくありません。

お子さんの性格や今のご褒美の大きさを見ながら、ご家庭に合う形を少しずつ見つけていってもらえたらうれしいです。

いちばん大切なのは、約束したご褒美を守ること

ここまで、何をご褒美にするかという話をしてきましたが、ご褒美について考えるときに、僕が大人として絶対に忘れてはいけないと思っていることが1つあります。

それは、ご褒美は親子の信頼関係に大きく関わっているということです。

ご褒美のあげ方について迷っていると、「このご褒美、本当にあげていいのかな?」と悩むことがありますよね。その結果、約束していたご褒美を、なんとなく流れであげないままにしてしまう。これが、僕はいちばんまずいと思っています。

大人の目から見て「このご褒美はよくないな」と思ったとしても、子どもと約束した事実は変わりません。そしてその約束を破ったとき、子どもの大人への信用は、大きく下がってしまうと僕は考えています。その影響は、ご褒美そのものが子どもに与える影響よりも、はるかに大きいと僕は思っています。

床に座って向き合い、男の子と指切りをする大人の女性
約束したご褒美を守ることは、ご褒美の中身以上に、親子の信頼につながります

僕はこれまで、いろいろな大人の方に子ども時代の話を聞いてきました。親御さんを信頼できていない方、親に対して悪いイメージを持っている方の多くから聞くのが、「約束を守ってもらえなかった」という話です。

ご褒美は、子ども心にとても楽しみで大きな存在です。その約束をうやむやにされることは、親への悪い思い出として残りやすいのかもしれません。

ご褒美の約束で大切にしたいこと

  • 約束したご褒美は守る「まぁいっか」とうやむやにしないことが、何より大切です
  • 切り替えるなら、理由をちゃんと話すこの子がそのご褒美をどう感じていて、どれくらい大きな存在なのかを考えたうえで、理由を伝えてあげてください

どんな理由を伝えるかは、本当にむずかしいところです。それでも、ご褒美を切り替えようとするときほど、「これは子どもとの信頼関係を壊すことにならないかな?」という視点を持っておいてほしいと思っています。約束と信頼の関係については、子どもとの信頼関係を崩す親の行動をまとめた記事でもお話ししています。

TERU

どんなに教育のことを学んでも、それを届けるのは親や先生です。子どもとの信頼関係が壊れてしまったら、意味がなくなってしまうと僕は思っています。

子どもとの信頼関係があってこその教育。当たり前のことかもしれませんが、当たり前がいちばん大事なんですよね。

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まとめ

今日のポイント

  • ご褒美の影響は、年齢・何に対してか・中身・頻度・あげ方で変わる
  • もともと楽しんでいることに、先に物のご褒美を約束すると、やる気が下がることがある
  • ご褒美にするなら、今当たり前にしている楽しみを少し特別にする形がおすすめ
  • 理想は、ご褒美がなくても楽しく、または習慣として取り組めること
  • 切り替えは「楽しみが少し増える工夫」「誕生日などの区切り」「くじ引き」がヒントに
  • 何より大切なのは、約束したご褒美を守ること
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よくある質問

ご褒美をやめたら、勉強しなくなりませんか?

おもちゃなどの大きなご褒美から切り替えるのは、本当にむずかしいことです。いきなりなくすのではなく、「いつもの楽しみが少し増える」形に置きかえたり、誕生日や進級などの区切りに理由を話して切り替えたりするのがおすすめです。あわせて、遊びのなかで学びに触れる、小さなステップで「できた」を感じられるようにするなど、ご褒美がなくても頑張れる工夫も少しずつ足していけると安心です。

褒めることも、ご褒美になりますか?

褒めるのも、気持ちの面でのご褒美のひとつです。この記事で紹介した研究で扱われていたのは、おもちゃや賞状などの物のご褒美です。128件の実験をまとめた研究では、言葉で認めることは、物のご褒美のように子どもが自分から取り組む気持ちを下げるという結果にはなっていませんでした(上げる効果も、子どもでははっきりしませんでした)。褒め方のバリエーションは子どもの褒め方20選で紹介しています。

ゲームやYouTubeをご褒美にしても大丈夫?

この記事でおすすめしているのは、すでに毎日、決まった時間だけやっている楽しみを、ときどき少しだけ増やす使い方です。たとえば「10日続けて頑張れたら、1日だけ30分を1時間に」のように、特別な日を作るイメージです。ふだんの時間の決まりはご家庭で話し合って決めてください。ゲームとの付き合い方は子どものゲーム依存を防ぐための記事も参考になると思います。

約束したご褒美が、やっぱりよくないと思ったら?

一度約束したご褒美は、まずは守ってあげてください。そのうえで、次からのルールを変えたいときは、子どもと落ち着いて話せるときに理由を伝えて切り替えます。黙って約束をなかったことにするのは、ご褒美そのものより子どもとの信頼関係に大きく響くと僕は考えています。

TERU

この記事を書いた人TERU幼児教育講師/子育て勉強会TERU 代表

幼児教室で、たくさんの親子と関わってきた幼児教育講師。YouTube「子育て勉強会TERUch」(登録者 約13万人)で、子どもの発達や関わり方を研究の知見とあわせて発信しています。Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。3〜8歳向けの「TERU先生の動画教室」や、オリジナルのひらがな・カタカナ教材も手がけています。

あわせて読みたい

参考文献

  1. Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children's intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjustification” hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129–137. DOI
  2. Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin, 125(6), 627–668. DOI
  3. Ulber, J., Hamann, K., & Tomasello, M. (2016). Extrinsic rewards diminish costly sharing in 3-year-olds. Child Development, 87(4), 1192–1203. PDF

※この記事は一般的な子育て情報としてまとめたものです。お子さんの心や体の状態で心配なことがあるときは、医師や専門機関にご相談ください。

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