「一人っ子だと、かわいそうなのかな…」「わがままに育たないか心配…」「人付き合いが苦手になったらどうしよう…」。一人っ子を育てている親御さんから、こうしたご相談を本当によくいただきます。
実は僕自身も一人っ子として育ってきました。なので、親御さんの不安もわかるし、子どもの側で「一人っ子だから」と言われたときの気持ちも、よく覚えています。
今回は、幼児教育講師としての経験と、一人っ子として育った僕自身の体験から、一人っ子の子育てで大切にしてほしい心構えをまとめてお話しします。
この記事でわかること
- 「一人っ子だから」という見方を手放したほうがいい理由
- 「かわいそう」「わがまま」「マイペース」と言われることへの考え方
- 兄弟がいなくても、人と関わる力を育てていくための環境づくり
- 我慢や譲り合いの経験を、家庭の中でつくっていく方法
- 甘やかしにならずに、求められた愛情に応えていくコツ
もくじ
「一人っ子だから」と決めつけない
一人っ子の子育てでまず大切にしてほしいのは、子どものどんな部分も「一人っ子だから」と決めつけずに、これからの可能性に目を向けてあげることです。
たとえば、周りの子より人とのコミュニケーションが少し苦手に見えたり、兄弟がいる子と違う部分が見えたりすると、つい「一人っ子だからかな」と考えてしまいがちですよね。でも僕は、この考え方はあまりおすすめしていません。
一人っ子として育ってきた僕の感覚でいうと、「一人っ子だから」と言われると、自分の可能性を環境に決められてしまうような感覚になるんです。なので僕は、子どものころこの言葉があまり好きではありませんでした。
今コミュニケーションが少し苦手だったとしても、これからうまく人と関われるようになる可能性は十分にあります。そんなときに「一人っ子だから人付き合いは苦手よね」と言われ続けると、子ども自身がそう思い込んでしまうことがあります。この思い込みが、その子の本当の可能性の芽をつんでしまうこともあるので、どんな部分も「その子の個性」として受け止めてあげてほしいと思います。
一人っ子はかわいそう?兄弟がいても悩みはある
一人っ子を育てている方からよくいただくのが、「人と関わる機会が少なくなりそうで不安です」「周りから一人っ子はかわいそうと言われて悩んでいます」「社交的に育たないのでは」といったご相談です。
お気持ちはすごくわかります。ただ、兄弟を育てている方からも、「下の子が生まれてから上の子に時間をかけてあげられていなくて、愛情不足にならないか心配」「下の子のお世話で、上の子とゆっくり話せなくなってきた」といった悩みを本当にたくさん伺います。
つまり、兄弟がいてもいなくても、それぞれに良さと悩みがあって、結局はどっちもどっちなんですよね。
だからこそ僕が一番大事だと思っているのは、「気にしないこと」です。一人っ子かどうかで悩みすぎても、子どもの育ち方が決まるわけではありませんし、どちらの環境でも子どもはちゃんと育っていくと僕は思っています。
ただ、ひとつだけ言えるのは、親が「一人っ子であること」にずっと不安を持っていると、それは子どもにも伝わりやすいということです。そのほうが親子ともに心の負担が大きくなるので、気にしすぎないことが、ひとつの大切な心構えだと僕は思っています。
研究でわかっていること
ニュージーランドの大人約2万人を対象にした研究で、一人っ子として育った人と、兄弟がいる人の性格を比べたところ、統計的な差はいくつか見られたものの、その差はどれも「とても小さい」ものでした。
研究チームは、日常の中で感じ取れるほどの違いではないと結論づけています。研究のタイトルにも「very, very small(とても、とても小さい)」という言葉が使われています。
「兄弟が欲しい」と言われたとき
一人っ子の親御さんを悩ませる言葉に、子どもからの「兄弟が欲しいなぁ」がありますよね。
僕も子どものころに言ったことがあると思うのですが、これは本気で思っているというより、まさに「隣の芝生は青く見える」という感じで、なんとなく憧れて言っていることが多いと僕は感じています。
兄弟がいる大変さを知らないまま、ふわっと言っていることが多いので、「ゲーム欲しいなぁ」「おもちゃ欲しいなぁ」と言っているのと同じくらいの感覚で、軽く受け止めてあげて大丈夫です。
人と関わる場をつくってあげれば大丈夫
兄弟がいないことで一番気になるのは、やはり人とのコミュニケーションの機会ではないでしょうか。
たしかに、もし一人っ子でずっと親とだけ過ごすような毎日だと、人と関わる練習の機会は少なくなってしまいます。いろいろな人と関わる経験は、子どもにとって大事だと僕は思っています。
なので、一人っ子の場合は、ほかの子と関われる環境を意識してつくってあげれば十分です。幼稚園や保育園はまさにその場ですし、公園に行く、知り合いの家族と一緒に遊ぶ、児童館に行ってみる、といったことでも構いません。環境さえあれば、子どもはちゃんと人と関わる経験を積んでいけます。
兄弟がいないと何か困ったことが起きるかというと、そんなことはないと僕は思っています。安心して、関わりの機会をつくってあげてください。

輪に入れない子は、無理に入れなくていい
気質的に、友だちの輪になかなか入っていけない子もいます。実は僕もそのひとりでした。
そんなときに「ほら、せっかくだからお友だちと遊んできなよ!」と背中を押す必要はありません。ひとりで遊んでいたり、遊んでいるお友だちをじっと見ていたりするだけでも、その姿を肯定して見守ってあげてください。
見守ってもらえていることが安心の力になって、その子のタイミングで、少しずつ輪に入っていけるようになることが多いと僕は感じています。
TERU輪に入れるようになるまでの時間は、本当に子どもそれぞれです。
「早く輪に入ってほしい」と思う気持ちはぐっとこらえて、その子のタイミングを待ってあげてください。
家庭で「話を聴いてもらえる」経験を
これは一人っ子に限った話ではありませんが、人と話すことが得意になっていくには、家庭で否定されずに話を聴いてもらえた経験が大事だと僕は考えています。
子どもの少しおかしな発言や、ちょっと的外れな意見も、まずは否定せずに「そう思ったんだね」と聴いてあげる。家の中でのこうした関わりが、外で人と話すときの安心感につながりやすいと思います。
とはいえ、忙しい毎日の中で、いつも子どもの話をじっくり聴くのは本当にむずかしいですよね。余裕のあるときに、できる範囲で十分です。
子育ての経験・過保護への不安との付き合い方
「経験がない」不安は、どの親も同じ
一人っ子の子育てでよく聞くのが、「子育ての経験を積めないのが不安」というお悩みです。
不安になる気持ちはわかります。ただ冷静に考えると、兄弟を育てている方も、上の子のときは経験のない中での子育てでした。そこは一人っ子とまったく同じ条件なんです。
もちろん、上の子での経験が下の子の子育てに活きることも多いと思います。一方で、兄弟を育てている方からは「つい兄弟を比べてしまう」「上の子と全然違うタイプで戸惑う」といった悩みもたくさん伺います。気づかないうちに比べてしまって、子どもが傷ついていた、ということもあります。経験がいつも助けになるとは限らないんですよね。
わからないことがあって不安なときは、身近な先輩の親御さんや自分の親に聞いたり、保育園や幼稚園の先生に相談したり、本やYouTubeで調べたりしてみてください。今はいろいろな方法で、子育ての予習ができます。
そして、調べたり聞いたりしても答えが出ないことは、ベテランの親御さんでも「これが正解」という対応がないことが多いです。そんなときは、気にしすぎずに、時間がたって自然に落ち着くのを待つくらいで大丈夫です。子育ては、親が全部に対処しなくても、時間とともに解決していくことも多いものです。それくらいの気持ちのほうが、肩の力が抜けて、一人っ子の子育てもしやすくなると僕は思っています。ただ、体や発達のことで気になることがあるときは、早めにかかりつけの小児科などに相談してください。
「過保護かも」と心配している方へ
一人っ子を育てていると、「自分は過保護になっていないかな」と悩む方も多いです。
これは僕がこれまでたくさんのご家庭と関わってきた経験から思うことですが、自分が過保護じゃないかと心配している方は、たいてい過保護ではありません。
「過保護になっていないか不安なんです」とご相談にくる親御さんの多くは、子どもとの距離感や、先回りしすぎないことを、ちゃんと意識できているんです。なので、「過保護になっていないかな」と自分を振り返る意識さえ持っていれば、それで十分だと僕は思っています。これまでの関わりで自分を責めたり、不安に思いすぎたりする必要はありません。
先回りや口出しが気になるときの関わり方は、過干渉な親の特徴と、子どもに任せる関わり方の記事でも詳しくお話ししています。
わがままにならないために、我慢と譲り合いの経験を
一人っ子の子育てで、僕が特に意識してほしいと思っているのがここです。
兄弟がいると、順番を待つ、おもちゃを貸すなど、自然と何かを我慢しないといけない場面が生まれます。こうした経験が、自分の気持ちにブレーキをかける力、つまり自制心や我慢する力を育てていきます。一人っ子の場合は、その場面が少なくなりやすいので、家庭の中で意識してつくっていけると安心です。
研究でわかっていること
一人っ子かどうかを比べた研究ではありませんが、ニュージーランドで生まれた約1,000人を32歳まで追いかけた研究では、子ども時代の自制心が高かった人ほど、大人になってからの健康やお金の管理、法律に触れるトラブルなどの面で、よい結果を示していました。この関係は、知能や家庭の経済状況の影響を取り除いても見られています。
同じ論文では、イギリスの兄弟(ふたご)約500組も調べていて、同じ家庭で育っても、自制心が低かったほうの子に、その後の課題が多く見られました。
家庭のルールをつくって、守る経験を
自制心を育てるためにまずできるのは、家庭の中でいくつかルールを決めて、それを守る経験をすることです。
たとえば「おもちゃを買うのは誕生日など特別な日だけ」「ゲームや動画は決めた時間まで」「公園は時計の長い針がここに来たら帰る」など、内容はご家庭に合うもので構いません。そして、子どもがわがままを言ったときには、ルールにそって「それはできないよ」とちゃんと伝えてあげる。シンプルですが、これが自制心を育てていく大事な関わり方だと僕は思っています。
なんでもわがままを言えば思いどおりになる、という感覚のまま大きくなると、成長して人間関係が広がったときに、本人がとても苦しくなってしまうことがあります。なので我慢の経験は、幼児期から少しずつ積ませてあげたいところです。
ルールを守れなかったときの声かけや、わがままになりやすい声かけについては、子どもの自立につながる声かけと、わがままになりやすい声かけの違いでも紹介しています。
「分け合う」経験を日常の中に
我慢と近いところでは、譲り合いや分け合いも、経験できるときにどんどん経験させてあげたいことです。

家庭でできる「分け合う」経験
- 食事の取り分けをまかせる家族で大皿のおかずを食べるときに、みんなの分を取り分ける役を子どもにお願いしてみてください
- お友だちが来たときに託してみるおもちゃや食べ物を「みんなに同じだけ分けてあげてね」と子どもに託すことで、独り占めではなく、みんなで分け合うことを体験できます。食べ物を分けるときは、アレルギーなどを相手のおうちの方に確かめてからにしてください
マイペースと早期教育はどう考える?
マイペースは、一人っ子だからではない
「一人っ子はマイペース」というのも、よく言われることですよね。
僕の経験からいうと、マイペースかどうかは、一人っ子かどうかで決まるものではないと感じています。気質としてマイペースな子は、兄弟がいてもいなくてもたくさんいます。
なので、「一人っ子だからマイペースになったのかも」「マイペースにならないように気をつけなきゃ」と意気込みすぎなくていいと思います。むしろマイペースは、自分のペースを大事にできるという長所でもあると僕は思っています。
焦って早期教育をしすぎない
これは一人っ子の子育てで、わりと多い傾向だなと僕が感じていることです。
一人っ子の場合、ひとりにかけてあげられるお金が多くなりやすいと思います。そのせいかはわかりませんが、早い時期から習い事などにお金をかけて、いろいろなことをさせる傾向が強いように感じています。
もちろん、ほどよい範囲ならよいと思います。ただ、早い時期から英才教育のようなものをやりすぎると、子どもにとって負担が大きくなりすぎることがあります。
僕は、子どもはまず生まれてからたくさんの愛情を受けて心を育て、親が安全基地になることで、気持ちが豊かに育っていき、その上に知識やいろいろな技能の習得がある、という順番を大切にしています。この順番を飛ばして、先に知識を育てようとしすぎるのは、ちょっと待ってほしいなと思っています。
幼児期から、家族でゆっくりする時間もないくらい習い事をかけもちして、寝る時間も不安定。そんな状態は、僕の経験ではうまくいかないことが多いです。一人っ子だからこそ、お金を投資するよりも、親の時間を投資することを大切にしてほしいと思います。親子の時間や、お友だちと遊ぶ時間も、ぜひ大事にしてあげてください。
習い事を選ぶときの考え方は、ワーキングメモリーを鍛える習い事の研究と選び方の記事も参考にしてみてください。
子育てに役立つ動画・レポートと、ひらがな教材のお試し
子育て勉強会TERUの公式LINEを友だち追加すると、かんたんなアンケートに答えて受け取れるLINE登録者限定の動画・レポートと、見せるだけで取り組めるひらがな・カタカナ教材(あ行)の無料お試しをお届けしています。
公式LINEを友だち追加する求められた愛情には応えて大丈夫
一人っ子を育てていると、「甘やかしすぎているんじゃないか」と心配になることもありますよね。周りから「甘やかしてない?」なんて言われると、なおさら不安になると思います。
でも僕は、子どもが求めてきた愛情には、応えられるときはどんどん応えてあげていいと思っています。もちろん、いつも100%応えないといけないわけではありません。
「抱っこして!」「ぎゅーして!」といった日々のスキンシップは、子どもが求めているなら、ぜひたくさんしてあげてください。それは甘やかしではなく、親との愛着を育てて、親が子どもの安全基地になることにつながっていきます。そうした安心感が、「自分はなんでもできるんだ」という前向きな気持ちの土台にもなりやすいと僕は感じています。
愛情に応えることと、わがままを聞くことは別
愛情を求めた純粋なスキンシップは、受け止めてあげてください。一方で、「おもちゃ買って!」のように、家庭で決めたルールを越えるお願いには「それはできないよ」と伝えます。この線引きがあれば、甘やかしにはなりにくくなります。
抱っこの心配については、「抱っこしすぎかな…?」と不安な親御さんへの記事でもお話ししています。
TERU一人っ子の子育ては、迷うことや不安になることも多いかもしれません。でも、一番大事なのは「大丈夫」という気持ちだと僕は思っています。
そのときはどうにもならないように思えても、時間がたてば笑い話になっていることも多いです。それくらいの気楽さで、できる範囲で向き合っていけたらと思います。
まとめ
今日のポイント
- どんな部分も「一人っ子だから」と決めつけず、その子の個性と、これからの可能性に目を向ける
- 兄弟がいてもいなくても悩みはある。親が気にしすぎないことが大切
- ほかの子と関われる場をつくれば大丈夫。輪に入れない子は無理に入れず、見守る
- 家庭のルールを守る経験や、分け合う経験で、我慢する力を育てていく
- 早期教育は焦らず、お金より親の時間を投資する
- 求められた愛情には応えていい。ただしルールを越えるわがままには「それはできない」と伝える
よくある質問
一人っ子はかわいそうなの?
僕はそうは思っていません。兄弟がいる子にも、いない子にも、それぞれの良さと大変さがあります。大人を対象にした研究でも、一人っ子と兄弟がいる人の性格の差はとても小さいことが報告されています。親が「かわいそう」と思い続けていると、その気持ちが子どもに伝わりやすいので、気にしすぎないことをおすすめしています。
一人っ子はわがままになりやすい?
一人っ子だから必ずわがままになる、ということはありません。ただ、兄弟がいると自然に生まれる「待つ」「譲る」場面が少なくなりやすいので、家庭のルールを決めて守る経験や、食事を取り分ける・お友だちと分け合うといった経験を、意識してつくってあげると安心です。
子どもに「兄弟が欲しい」と言われたら?
深い意味があるわけではなく、なんとなくの憧れで言っていることが多いです。「おもちゃ欲しいなぁ」と同じくらいの感覚で、軽く受け止めてあげれば十分です。
人見知りで、友だちの輪に入れません
気質的に輪に入るまでに時間がかかる子もいます。「遊んできなよ」と促すより、見ているだけの姿も肯定して見守ってあげてください。安心できると、その子のタイミングで少しずつ関われるようになることが多いです。園や公園、児童館など、ほかの子と同じ場所で過ごせる機会をつくっておくだけでも十分です。

この記事を書いた人TERU幼児教育講師/子育て勉強会TERU 代表
幼児教室で、たくさんの親子と関わってきた幼児教育講師。YouTube「子育て勉強会TERUch」(登録者 約13万人)で、子どもの発達や関わり方を研究の知見とあわせて発信しています。Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。3〜8歳向けの「TERU先生の動画教室」や、オリジナルのひらがな・カタカナ教材も手がけています。
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参考文献
- Stronge, S., Shaver, J. H., Bulbulia, J., & Sibley, C. G. (2019). Only children in the 21st century: Personality differences between adults with and without siblings are very, very small. Journal of Research in Personality, 83, 103868. DOI
- Moffitt, T. E., Arseneault, L., Belsky, D., et al. (2011). A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108(7), 2693–2698. PubMed
※この記事は一般的な子育て情報としてまとめたものです。お子さんの心や体の状態で心配なことがあるときは、医師や専門機関にご相談ください。



