「ダメって言ったことを、こっちを見ながらわざとやる…」「叱るとニヤッとして、またくり返す…」。そんな子どもの姿に、毎日イライラしてしまう親御さんは本当に多いです。
大人の顔をうかがいながら、わざと困ったことをする。こうした行動は「試し行動」と呼ばれていて、実は多くの子に見られる自然な行動です。とはいえ、目の前でわざと牛乳をこぼされたら、落ち着いてなんていられないですよね。
この記事では、試し行動とは何か、どんな理由で起きやすいのか、そして親ができる4つの対応を、なるべく今日から試せる形でまとめました。
この記事でわかること
- 試し行動とは何か、イヤイヤ期との違い
- 試し行動が起きやすくなる5つの原因
- 試し行動が見られたときの4つの対応と、避けたい関わり方
- その場の対応より大切にしたい「根本の関わり」
試し行動とは?イヤイヤ期との違い
試し行動とは、悪いことだとわかっているのに、わざとやって大人の反応を確かめる行動のことです。言われたことと反対のことをわざとして、大人の様子をうかがう。そんな行動全般をまとめて、こう呼んでいます。
だいたい2歳ごろから見られるようになり、小学生になってからも十分に起こる行動だと僕は考えています。
よく見られるのは、たとえばこんな行動です。
- わざと物を投げる
- いけないとわかっているのに、絵本やおもちゃを破ったり壊したりする
- 食べ物や飲み物をわざとこぼす、口から出す
- 言うことを聞かずに、わがままをくり返す
- わざとお漏らしをする
お漏らしが続くときは、体の原因が隠れていることもあるので、かかりつけの小児科に相談してみてください。
こうした行動をしながら、大人のほうをチラチラ見て反応をうかがっている様子があれば、「もしかしたら試し行動かも?」と考えてみてください。

イヤイヤ期や反抗期との見分け方
試し行動は、イヤイヤ期や反抗期の姿と混同されることがあります。
イヤイヤ期は「とにかく自分の思いを通したい!」という自己主張の面が強く出ます。一方で試し行動は、良くない行動をしながら、あるいはしたあとに、大人の顔をうかがっているのが特徴です。親との関係のなかで様子を見ているような行動なので、雰囲気が少し違うんですね。
TERUとはいえ、子どものいろいろな行動を「これはイヤイヤ」「これは試し行動」と厳密に分ける必要は、僕はないと思っています。
「そういう行動もあるんだな」と知っておくだけで、見え方が少し変わることがあるので、まずは知識として持っておいてもらえたらうれしいです。
試し行動が起きる5つの原因
では、試し行動はどんな理由で起きることが多いのでしょうか。
原因は本当にさまざまで、1つだけではないことのほうが多いです。なので「こういうことが考えられるんだな」くらいの気持ちで読んでみてください。
1. 愛情や、信頼していい人かを確かめたい
試し行動は、親に対してだけでなく、保育士さんや幼稚園の先生に対してする子も結構います。「こんなに悪いことをしても、この人は受け止めてくれるのかな?」という、ある種の信頼の確認です。
とくに担任の先生が変わったときや、入園したあとなどに見られることが多いです。これは、その人との信頼関係を作りたいという気持ちの表れでもあるので、関係を深めるチャンスだと思って関わってあげてほしいです。
2. 寂しさから、気を引いて注目してほしい
ちょっとした寂しさが続いたときや、親が忙しくてなかなか構ってあげられない日が続いたときに、「自分を見てほしい!」という思いから試し行動をすることがあります。
これはあまり深刻に考えすぎないでください。ある意味、子どもがサインを送ってくれているということなので、気づいたときにちゃんと応えてあげれば大丈夫です。
3. 大人の言葉と態度が合わず、混乱している
少しむずかしいのですが、大人の言葉と態度が食い違っているときにも、試し行動が起きることがあります。
たとえば、子どもが「ご飯食べたくない!」と言ったときに、本当は食べてほしいのに、あえて「じゃあ食べなくていいよ!」と返すことってありますよね。そのときに親がイライラした態度をしていると、子どもは言葉では受け入れてもらえたのに、態度からは反対に拒否を感じて、混乱してしまうことがあります。
この言葉と態度のズレから不安を感じて、試し行動につながることもあるので、頭の片隅に置いておいてもらえたらと思います。
4. 叱られることが多い
叱られることが続くと、寂しさや悲しさから、愛情を確かめたくなって試し行動をすることがあります。極端に叱ることが多くなっているなと感じたら、大人の関わり方を見直していくことで、少しずつおさまっていくことがあります。
5. 大人を信じにくくなるようなつらい経験
多くのご家庭には当てはまらないと思いますが、虐待など、つらい環境で過ごしてきた子は、人を信用することがむずかしくなることがあります。そのため「この人はどこまで受け入れてくれるのか」を、試し行動で確かめようとすることがあります。
ポイント
5つの原因を見てみると、多くの場合、根っこには「自分を見てほしい」「受け入れてほしい」という気持ちがあります。困った行動の形だけを見るのではなく、その奥の気持ちに目を向けてあげることが、対応を考える出発点になります。
試し行動への4つの対応
まずお伝えしたいのは、試し行動は多くの子がする自然な行動だということです。何かのサインであることもあるので、気づいたらできる対応をしてあげてほしいのですが、深刻に考えすぎないことも大切です。
親にだって、できることとできないことがあります。ここから紹介する4つも、できる限り、できる範囲で試してみてください。
対応1:たくさんスキンシップをとる
まずはこれです。原因の多くが「自分に注目してほしい」「受け入れてほしい」という気持ちなので、スキンシップをできる限り大切にしてあげてください。
ここで言うスキンシップは、体が触れ合うことだけではありません。話を聞いてあげる時間を増やすことや、「頑張ってるね」と認める声かけをすることも含みます。
これは試し行動のときだけに大事なことではありませんが、試し行動が増えているときの対応の土台になります。毎日の関わりのなかで「ちゃんと自分を見てくれている」と感じられると、試し行動は自然と減っていきやすくなります。

対応2:良い行動に大げさに反応する
試し行動では、注目を集めることが目的になっていることが多いです。悪い行動でたくさん注目してもらえる経験が重なると、それがある種の成功体験になって、また悪い行動で気を引こうとしやすくなります。子どもの気持ちを考えれば、自然なことですよね。
そこで、悪い行動への反応よりも、良い行動をしたときに大げさに反応してあげてください。「良い行動で注目してもらえた」という経験を積み重ねることで、前向きな行動で気を引こうとする方向に変わっていきやすくなります。褒め方のバリエーションは、子どもの褒め方20選の記事でも紹介しています。
研究でわかっていること
試し行動だけを調べた研究ではありませんが、オランダやイギリスの研究者、レイテン博士らは、子どもの反抗的な行動や困った行動を減らすための親向けプログラムの研究154件をまとめて分析しました。
その結果、プログラムに含まれる26の方法のうち、褒めることを中心とした「良い行動へのプラスの反応」と、「自然な結果・筋の通った結果から学ばせる関わり」が、より大きな効果と結びついていました。
悪い行動を「無視」はしない
「反応しなければ、悪いことで注目を集められないから、やめるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
ただ、試し行動をしている子は、ちょっとした不安を抱えていて、「応えてくれるかな?受け入れてくれるかな?」と確かめていることが多いです。そこで無視されると、もっと寂しい思いをして、試し行動がかえって増えてしまうことがあります。良くない行動には淡々と普通に対応して、良い行動には大げさに反応する。このくらいのスタンスがいいと僕は思っています。
対応3:いけないことは落ち着いて伝える
試し行動の根っこには「受け入れてほしい」という思いがありますが、だからといって、いけないことまで全部まるっと肯定してしまうのは、なるべく避けたい対応です。
良くない行動で気を引こうとして、それがそのまま受け入れられると、子どもにとっては成功体験になり、また同じ行動をくり返すことがあります。良くないことは「良くないよ」とちゃんと伝えてあげてください。人や自分がけがをしそうな行動のときは、まず落ち着いて止めてから伝えてください。
大人コップの牛乳をわざとこぼすのは、良くないよ。
子ども……うん。
大人ちゃんと聞いてくれてありがとう。大好きだよ。
このように、伝えたあとに愛情を表す言葉をかけて、ぎゅっと抱きしめてあげるのもおすすめです。

ここで気をつけたいのが、感情的に叱らないことです。注目を集めることが目的になっている場合、良くない行動のときに親から強い熱量で注目されると、褒められるにしても叱られるにしても、それが成功体験になってしまうことがあります。だからこそ、淡々と普通に伝えることが大事なんですね。
とはいえ、わざとやられると、つい声が大きくなってしまうのが親ですよね。叱り方のコツや、叱りすぎてしまったあとのフォローは、子どもの叱り方の記事にまとめています。
対応4:大人の言動に一貫性があるか見直す
原因の3つ目に「大人の言葉と態度が合わず、混乱している」を挙げました。これが原因になっているなら、大人の側が見直していく必要があります。
たとえば、同じ場面なのに昨日は怒られて今日は怒られない。同じことをしても、そのたびに反応がまったく違う。言っていることがコロコロ変わる。こうしたことが多いと、子どもは混乱したり不信感を持ったりして、試し行動で大人の反応を確かめるようになることがあります。
チェックしたい2つのこと
- 叱るとき・叱らないときの一貫性同じ行動なのに、日によって叱ったり叱らなかったりが極端になっていないか
- 言葉と態度のズレ口では「いいよ」と言いながら、怒った態度になっていないか
「これはちょっと当てはまるかも…」と思うことがあれば、少しずつ見直していき、子どもにも素直に「〇〇って言ったのに、怒ったような態度をしてごめんね」と伝えてみてください。試し行動をしている子は、大人の様子を実はよく見ていることが多いです。「わかってくれた」と感じて、安心できることがあります。
親子の信頼関係を崩しやすい親の行動については、子どもとの信頼関係を崩す親の行動の記事でも詳しく紹介しています。
研究でわかっていること
イギリスのガードナー博士は、家庭での親子のやりとりを観察し、親子がぶつかった場面で、母親が子どもに出した指示を最後まで通すか、途中で引っ込めてしまうかを「一貫性」として調べました。
その結果、行動面の問題がある幼児の母親は、問題のない幼児の母親に比べて、親子の衝突の場面で一貫しない対応をする割合が高いことが報告されています。
この研究の「一貫性」は、指示を最後まで通すかどうかで見たもので、試し行動そのものを調べた研究でもありません。また、一貫しない対応と子どもの行動の問題が一緒に見られやすいことを示したもので、どちらが原因かまでを決めたものではありません。それでも、大人の対応がぶれすぎていないかを見直すきっかけにはなると僕は感じています。
「応急処置」と「根本の関わり」を分けて考える
ここまで4つの対応を紹介しましたが、このなかで「根本の対策」になるのはどれだと思いますか?
僕は、対応1の「スキンシップ」と、対応4の「大人の言動の見直し」だと考えています。スキンシップやコミュニケーションは毎日の土台になる関わりで、言動の見直しは、大人自身のあり方を見つめ直すことだからです。
子どもに困った行動が見られたとき、その場でどうするかという対応も、もちろん効果を発揮することはあります。ただ、結局は毎日の当たり前の生活のなかでどう関わっているか、そして大人がどんな言動をしているかを見直すことが、どんな行動にも通じる根本の対策になると僕は思っています。
そうは言っても、目の前でおちょくるような態度をとられるとイライラしますし、「この態度にどう対応すればいいの?」が一番の関心ごとになってしまいますよね。その気持ちは本当によくわかります。
だからこそ、子どものための対応を考えるときに「これは応急処置かな?根本の関わりかな?」と一度立ち止まってみてください。応急処置的な対応をしてももちろん大丈夫です。そのうえで、根本の関わりも1つ考えて実践できると、子どもにとっては何よりうれしいことだと思います。
根本の関わりとしては、子どもに100%注目して一緒に過ごす時間を作ったり、絵本の読み聞かせをしたりといった、親子の信頼関係を育む関わりが向いています。1日5分だけ子どもに注目する方法は、「1日5分の特別タイム」の記事で詳しく紹介しています。
あわせて読みたい
TERUスキンシップやコミュニケーションは、試し行動に限らず、子どものいろいろな困った行動に良い影響を与えやすい関わりだと僕は感じています。
方法は1つではないので、ご家庭に合ったやり方で、親子の時間を大切にしてみてください。
親が抱え込みすぎないために
試し行動は、多くの子に見られる行動です。大きな問題だととらえすぎずに、今回の内容を参考に、できることから試してみてください。
毎日わざと困ったことをされると、親の心がすり減ってしまうのも当然です。うまく対応できない日があっても大丈夫です。
ただ、試し行動がとても激しくて長く続くときや、関わり方に悩んでつらいときは、ひとりで抱え込まずに、かかりつけの小児科や、お住まいの地域の保健センター、子育ての相談窓口などに相談してみてください。話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることも多いです。
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公式LINEを友だち追加するまとめ
今日のポイント
- 試し行動は、わざと良くないことをして大人の反応を確かめる行動。2歳ごろから小学生以降まで見られる
- 根っこには「自分を見てほしい」「受け入れてほしい」という気持ちがあることが多い
- 対応は、スキンシップ・良い行動への大げさな反応・いけないことを淡々と伝える・大人の一貫性の見直しの4つ
- 悪い行動の無視や、感情的に叱ることは、試し行動を増やしてしまうことがある
- その場の応急処置だけでなく、毎日の関わりという根本の対策も1つ実践してみる
よくある質問
試し行動は何歳ごろまで続くの?
試し行動はだいたい2歳ごろから見られ、小学生になってからも起こることがあります。年齢で区切れるものではないので、「何歳までに終わるか」よりも、子どもが「ちゃんと見てもらえている」と感じられているかに目を向けてあげるのがおすすめです。
試し行動があるのは、愛情不足ということ?
そうとは限りません。寂しさから気を引きたいこともありますが、信頼できる人かを確かめたい、大人の言葉と態度のズレに戸惑っているなど、原因はいろいろです。試し行動は多くの子に見られる自然な行動なので、自分を責めすぎずに、できる範囲でスキンシップや声かけを増やしてみてください。
試し行動は無視したほうがいい?
無視はおすすめしません。試し行動をしている子は「受け入れてくれるかな?」と確かめていることが多いので、無視されるとかえって寂しさが増し、試し行動が増えてしまうことがあります。良くない行動には淡々と普通に対応して、良い行動のときに大げさに反応してあげてください。
保育園や幼稚園の先生にも試し行動をするのはなぜ?
先生に対しても「この人は受け止めてくれるかな?」と信頼を確かめていることがあります。担任の先生が変わったときや、入園したあとによく見られるもので、その人と信頼関係を作りたいという気持ちの表れでもあります。

この記事を書いた人TERU幼児教育講師/子育て勉強会TERU 代表
幼児教室で、たくさんの親子と関わってきた幼児教育講師。YouTube「子育て勉強会TERUch」(登録者 約13万人)で、子どもの発達や関わり方を研究の知見とあわせて発信しています。Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。3〜8歳向けの「TERU先生の動画教室」や、オリジナルのひらがな・カタカナ教材も手がけています。
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参考文献
- Leijten, P., Gardner, F., Melendez-Torres, G. J., et al. (2019). Meta-analyses: Key parenting program components for disruptive child behavior. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 58(2), 180–190. DOI
- Gardner, F. E. M. (1989). Inconsistent parenting: Is there evidence for a link with children's conduct problems? Journal of Abnormal Child Psychology, 17(2), 223–233. PubMed
※この記事は一般的な子育て情報としてまとめたものです。お子さんの心や体の状態で心配なことがあるときは、医師や専門機関にご相談ください。




