リビングのラグの上で積み木を積む2歳くらいの子どもと、少し離れて座り笑顔で見守る大人の男性と女性

3歳児神話は本当?「3歳までは母親が」に悩む親へ伝えたいこと

  • 対象:0〜3歳ごろ
  • 参考文献:3件
  • 読み終わるまで:約10分

「3歳までは母親がそばにいないと、子どもに悪い影響があるのかな…」「保育園に預けて働いている自分は、子どもにかわいそうなことをしているのかも…」。いわゆる「3歳児神話」について、こうしたお悩みを本当によく聞きます。

逆に、家で子どもを見ている方からは「自分ひとりで見ていて、ちゃんと育つのかな」という不安の声も届きます。どちらの立場でも、悩んでいる方がとても多いテーマです。

今回は、3歳児神話について研究からわかっていることと、僕の考え、そして誰が見るかよりも大切にしてほしい3つのことをまとめました。

この記事でわかること

  • 「3歳児神話」とはどんな考え方で、国の白書ではどう書かれているか
  • 育休の長さや保育園通いと、子どもの育ちの関係を調べた研究
  • 預けるか、家で見るかに迷ったときの考え方
  • 誰が見るかよりも、0〜3歳で本当に大切にしたい3つのこと
もくじ
  1. 「3歳児神話」とは?悩む親御さんが多い理由
  2. 研究からわかっていること
  3. 預ける?家で見る?家庭に合った形で大丈夫
  4. 大切なこと①いろいろな人と関われる環境
  5. 大切なこと②誰が見るかより「関わり方の質」
  6. 大切なこと③赤ちゃんのやることを邪魔しない
  7. まとめ
  8. よくある質問

「3歳児神話」とは?悩む親御さんが多い理由

3歳児神話とは、「子どもは3歳までは、いつも家庭で母親の手で育てないと、その後の成長に悪い影響がある」という考え方のことです。昔からよく言われてきたので、どこかで耳にしたことがある方も多いと思います。

日本では、この3歳児神話をめぐる議論が、なかなか決着しないまま続いているように僕は感じています。そして、この考え方に悩まされている親御さんがとても多いんです。

働かざるを得ない状況のご家庭では「子どもを預けている自分はダメな親なのかも」と劣等感を抱いてしまう。逆に、仕事をせずに子育てをしている方は「自分ひとりで本当に大丈夫なのかな」と悩んでしまう。同じ言葉が、立場の違う両方の親御さんを苦しめているところがあります。

とはいえ、子育ての形は家庭の事情で決まる部分も大きいですよね。思い通りに選べないことのほうが多いのに、「こうしないと悪影響がある」と言われたら、不安になるのは当然だと思います。

実はこの3歳児神話について、国はかなり前に見解を出しています。1998年の厚生白書(当時の厚生省、今の厚生労働省がまとめた報告書)では、3歳児神話には「少なくとも合理的な根拠は認められない」と書かれています。

同じ白書では、乳幼児期は人に対する基本的な信頼感を育てる大事な時期だけれど、その信頼感は、母親がいつも子どものそばにいなければ育たないというものではない、とも説明されています。そのうえで、保育所や地域の支えも受けながら、たくさんの手と愛情の中で子どもを育てることの大切さが書かれています。

研究からわかっていること

では、実際の研究ではどうなのでしょうか。ここでは、親が家で子どもを見る期間の長さと、保育園に通うことの影響を調べた研究を、それぞれ1つずつご紹介します。

育休の長さと、子どもの将来の関係

ドイツでは、出産後に母親が仕事を休める期間が、制度の改正で何度か延びてきました。この「改正の前に生まれた子」と「改正の後に生まれた子」を比べると、家で親と過ごした期間の違いが、その後の育ちにどう関わるのかを調べることができます。

研究でわかっていること

経済学者のダストマンさんらは、ドイツで母親の育休の期間が延びた3回の改正(2か月から6か月、6か月から10か月、18か月から36か月)の前後に生まれた子どもたちを比べました。

大人になってからの賃金や失業、大学への進学につながる学校に進んだかどうかなどを調べた結果、育休が延びたことで子どもの将来がよくなった、という結果は見られませんでした。一方で、母親が仕事に戻る時期は大きく変わっていました。

対象:ドイツの育休改正の前後に生まれた子ども2012年発表論文(American Economic Journal)

とくに0歳のうちに、数か月長く家で親と一緒に過ごすかどうかは、大きな違いのように思えます。それでも子どもの将来にはっきりした差が出なかったことを考えると、3歳までずっと母親がそばについていないと何か問題が起きる、という可能性は低いと僕は考えています。もちろん、子どもが十分に世話をされていないような場合は別の話です。

保育園に通うことの影響

反対に、子どもを保育園に預けることの影響はどうでしょうか。こちらは、日本の子どもたちを対象にした研究があります。

研究でわかっていること

経済学者の山口慎太郎さんらは、2001年と2010年に生まれた子どもを追いかけている国の調査のデータを使い、保育園の定員の増え方が地域ごとに違うことを利用して、保育園に通うことの影響を調べました。

その結果、保育園に通うことで、2歳半の時点の言葉の発達が進んでいたことが報告されています。また、母親が高校を卒業していないご家庭では、3歳半の時点の子どもの多動性(落ち着きのなさ)や攻撃性が低くなり、母親の子育ての仕方やストレスにもよい変化が見られました。

対象:日本の「21世紀出生児縦断調査」の子ども2018年発表論文(Labour Economics)

多動性や攻撃性、親の子育てへのよい変化は、すべての家庭で見られたわけではありません。それでも、早くから保育園に通うことで子どもに悪い影響が出る、というよりは、むしろよい影響も報告されていることがわかります。

TERU

なので、働かざるを得ない状況だからといって、子どもへの悪影響を心配しすぎる必要はないと僕は考えています。

保育園に預けていることを、罪悪感と一緒に抱え込まなくても大丈夫です。

預ける?家で見る?家庭に合った形で大丈夫

ここまでの研究を読むと、今度は「じゃあ、家で親が見ているほうがよくないの?」と感じた方もいるかもしれません。でも、そんなことはありません。

僕の考え方はとてもシンプルで、ご家庭の状況に合わせて、無理のない保育の環境を作ればOKだと思っています。

  • 親が忙しくて、子どもを預けないといけない状況なら、安心して預ける
  • 家で子どもを見られる状況があるなら、一緒にいてあげる

どちらが正解というものではないんですね。大事なのは「誰が見るか」よりも、その環境の中で子どもがどんな経験をしているかです。

ここからは、親が働くかどうか、親が見るかどうかよりも、子どもにとって本当の意味でよい影響を与えるために大切にしてほしいことを、3つご紹介します。

大切なこと①いろいろな人と関われる環境

1つ目は、子どもがどれだけたくさんの人と関われる環境があるか、ということです。

これは僕がいつもお話ししていることですが、0歳からの子どもにとってよい環境を考えるうえで、ここが1つの本質だと思っています。保育園に預けるか、親が見るかは本質ではなく、大切なのは、子どもがいろいろな人との関わりを経験できるかどうかです。

畳の部屋で3人の小さな子どもが積み木やおもちゃで遊び、そばで大人の女性が笑顔で見守っている
まわりにほかの子どもがいる環境は、それだけで刺激の多い環境でもあります。

人が多い環境は「複雑性」が高い

子どもは、まわりにたくさんの人がいる環境に身を置くと、自然と「複雑性」の高い環境で過ごすことになります。複雑性というとむずかしく聞こえますが、言いかえると、刺激が多いということです。

たとえば、まわりにお友達がたくさんいると、こんなことが起こります。

  • お友達におもちゃを取られてしまう
  • ほかの子の泣き声を聞く
  • ほかの子の動きをじっと観察する
  • ときには、叩かれてしまうこともある

親からすると、できれば避けてあげたいこともありますよね。でも、こうした思い通りにいかない出来事も含めた複雑性のある環境が、子どもの脳や心を育てていくのに大切だと言われています。

ポイント

保育園に預けているなら、そこはすでに複雑性のある環境です。家で子どもを見ている場合は、子育て支援センターや公園など、ほかの子どもがいる場所や施設に積極的に連れて行ってあげると、同じような経験ができます。

こうした環境が作れれば、親が見ても、預けても、どちらでも大丈夫です。

大切なこと②誰が見るかより「関わり方の質」

2つ目は、子どもと接する人の「質」です。

ここまでご紹介した研究をはじめ、いろいろな研究から、母親が子どもを見ないと問題が起きる、ということは大枠で否定されてきています。なので「うちは親が子どもと接する時間が短いけど大丈夫かな」という心配は、あまり気にしなくて大丈夫です。

それよりも子どもの育ちに関わってくるのが、子どもと接する人の関わり方の質です。質というとあいまいな言葉ですが、簡単にいうと次のようなことです。

  • 子どもに、どんな言葉をかけているか
  • どんなふうに触れ合っているか
  • どんな表情で子どもと接しているか

父親か母親か、祖父母か保育士さんか、といった立場の違いよりも、関わり方の違いのほうが子どもの育ちに差を生むと僕は考えています。当たり前と言えば当たり前ですよね。冒頭でご紹介した厚生白書でも、大切なのは育児をする人が注ぐ愛情の質だと書かれています。

保育園に預けるなら、保育士さんという子どもと関わるプロにお任せすることになるので、基本的には安心して大丈夫だと思います。家で子どもを見るなら、子どもとの接し方を少しずつ学んでいくことで、子どもにちゃんとよい影響を与えられるようになっていきます。

TERU

「質」と聞くと、ハードルが高く感じるかもしれません。でも、いつも完璧な声かけをする必要はまったくありません。

できる限り、できる範囲で。少しずつ関わり方の引き出しを増やしていければ十分です。

大切なこと③赤ちゃんのやることを邪魔しない

3つ目は、とくに家で赤ちゃんを見るときに気をつけてほしいことです。

保育園と家とで赤ちゃんを見るときの大きな違いは、大人が1人の赤ちゃんにかけられる時間の長さだと思います。家では1人の大人が1人の赤ちゃんと関わることが多いので、そのぶん、してあげられることも多くなります。そして、大切に育てようと思えば思うほど、その熱は増していきますよね。

ただ、ここで1つ考えてほしいことがあります。赤ちゃんが育っていくために必要なのは、「何かをしてもらう経験」と「自分の意思で何かをする経験」の両方だということです。

家で1対1だとつい手が出やすい

生まれたばかりのころはむずかしくても、赤ちゃんは少しずつ、手を伸ばして物を取ったり、口にくわえたり、はいはいで何かを取りに行ったりと、自分からできることが増えていきます。

保育園のように、大人が何人かの赤ちゃんを一緒に見ている環境では、こうした自分からの行動を、大人が邪魔してしまう場面はそれほど多くありません。ところが、家で1対1で見ていると、どうしても何かしてあげたくなってしまうんです。たとえば、こんな場面です。

  1. 場面1積み木に向かってはいはいしているとき

    赤ちゃんが積み木に向かってはいはいを始めたのを見て、よかれと思って「はい、どうぞ」と取ってあげてしまう。赤ちゃんにとっては、自分で取りに行くこと自体が大事な経験です。

  2. 場面2何かを口にくわえたとき

    危ない物ではないのに「ダメだよ」と取り上げてしまう。口に入れて確かめることも、赤ちゃんなりの探索のひとつです。ただし、口に入る大きさの小さな物(誤飲や窒息のおそれがある物)や、ボタン電池・磁石・薬・たばこなどは手の届かない場所にしまい、口に入れているときはそばで見守ってあげてください。

  3. 場面3絵本を何度も落として遊んでいるとき

    絵本を持ち上げては落とす遊びをくり返しているのを見て、「絵本は投げるものじゃないよ」と取り上げてしまう。

確かに、絵本は投げるものではありません。でも、赤ちゃんには絵本の正しい遊び方なんてまだわかりませんし、落ちる音や本の様子がおもしろくてくり返しているんですね。そうやって「自分がこうすると、こうなる」ということを、くり返し学んでいるところなんです。

木の床をはいはいで積み木に向かう赤ちゃんと、少し後ろで手を出さずに見守る大人の男性
手を出したくなる場面でも、少しだけ待って見守ってみてください。

ポイント

子どもを余裕を持って見てあげられる状況であればあるほど、「手を出さない」ことを意識してみてください。危なくないことなら、まずは少し待って、赤ちゃんが自分でやってみる時間を残してあげるイメージです。

とはいえ、毎日ずっと見守り続けるのは大変ですよね。全部の場面でなくても、「今日は1回待てた」で十分です。

子どもが自分でやろうとすることに先回りしてしまう関わりについては、過干渉と、子どもに任せる関わり方の記事でもくわしくお話ししています。

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まとめ

今日のポイント

  • 3歳児神話には「少なくとも合理的な根拠は認められない」と、国の白書にも書かれている
  • 育休が延びても子どもの将来がよくなったという結果は見られず、保育園に通うことのよい影響も報告されている
  • 預けるか家で見るかは、家庭の状況に合わせて無理のない形でOK
  • 大切なのは、いろいろな人と関われる環境と、関わり方の質
  • 家で見るときは、赤ちゃんが自分でやろうとすることを邪魔しない

よくある質問

0歳から保育園に預けると、愛着が育たない?

厚生白書でも、人への基本的な信頼感は、母親がいつも子どものそばにいなければ育たないものではない、と説明されています。大切なのは一緒にいる時間の長さよりも、関わり方の質です。保育園の送り迎えや家での時間に、子どもの様子を見て声をかけたり、触れ合ったりすることを大事にしてあげてください。

家で子どもを見ていると、発達で不利になる?

そんなことはありません。家で見る場合は、子育て支援センターや公園など、ほかの子どもや大人と関われる場所に出かけて、いろいろな人と関わる機会を作ってあげると安心です。そのうえで、赤ちゃんが自分でやろうとすることを邪魔しないことを意識してみてください。

父親や祖父母が中心に見ても大丈夫?

大丈夫です。誰が見るかという立場の違いよりも、どんな言葉をかけて、どんな表情で触れ合っているかという関わり方の質のほうが大切だと僕は考えています。関わり方について、家族で話しておくのもおすすめです。

預けることに罪悪感があるときは?

研究からは、保育園に通うことで子どもに悪い影響が出るというより、むしろよい影響も報告されています。働かざるを得ない状況なら、安心して預けて大丈夫です。罪悪感を抱え込むより、一緒にいられる時間を親子で楽しむことに気持ちを向けてみてください。

TERU

この記事を書いた人TERU幼児教育講師/子育て勉強会TERU 代表

幼児教室で、たくさんの親子と関わってきた幼児教育講師。YouTube「子育て勉強会TERUch」(登録者 約13万人)で、子どもの発達や関わり方を研究の知見とあわせて発信しています。Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。3〜8歳向けの「TERU先生の動画教室」や、オリジナルのひらがな・カタカナ教材も手がけています。

あわせて読みたい

参考文献

  1. 厚生省(1998). 平成10年版 厚生白書「少子社会を考える」第1部 第2章(概要). 厚生労働省
  2. Dustmann, C., & Schönberg, U. (2012). Expansions in maternity leave coverage and children's long-term outcomes. American Economic Journal: Applied Economics, 4(3), 190–224. DOI
  3. Yamaguchi, S., Asai, Y., & Kambayashi, R. (2018). How does early childcare enrollment affect children, parents, and their interactions? Labour Economics, 55, 56–71. DOI

※この記事は一般的な子育て情報としてまとめたものです。お子さんの心や体の状態で心配なことがあるときは、医師や専門機関にご相談ください。

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