「スーパーやショッピングセンターに行くと、毎回走って行ってしまう…」「何度言っても、楽しそうに走り回る…」。買い物のたびにヒヤッとしたり、周りの目が気になったりして、それだけでぐったりしてしまいますよね。
これは、僕がYouTubeのライブで「子どもがイオンやスーパーで毎回走りに行きます。何か親ができることはありますか?」というご質問をいただいたときにお答えした内容を、ブログ用にまとめ直したものです。
叱って止めるのではなく、「走らなくても済む状況」をつくる工夫を、買い物の前・買い物中・普段の遊びに分けて、8つのパターンでご紹介します。お子さんに合いそうなものが1つでも見つかればうれしいです。
この記事でわかること
- 子どもがスーパーで走り回ってしまう理由
- 買い物の前にできる準備(ミッションと体の状態)
- 買い物中にできる遊びや工夫(音が苦手な子への配慮も)と、歩けているときの声かけ
- 走ってしまったときの伝え方と、普段からできるブレーキの練習
もくじ
子どもがスーパーで走り回るのはなぜ?
まず知っておいてほしいのは、子どもが走り回る理由の多くは、わざと親を困らせたいからではない、ということです。理由がわかると、どの工夫が合いそうかも見えてきます。
走り回る主な理由
- 体を動かしたい幼児期は、体を動かしたい気持ちがとても強い時期です。広くてまっすぐな通路は、子どもにとって「走りたくなる場所」に見えやすいものです
- 刺激が多い色とりどりの商品、音楽、館内放送。わくわくして、気持ちが高ぶりやすい場所です
- ブレーキの力が育っている途中やりたい気持ちに自分でブレーキをかける力(抑制機能)は、まだまだ練習中です
- 注目してほしい走ると大人が追いかけてくれる、声をかけてくれる。それ自体が楽しい「注目」になっていることもあります
- 音や人ごみが苦手騒がしさや人の多さが不快で、その場から離れたくて走り出してしまう子もいます
3つ目の「ブレーキの力」は、脳の前頭前野(おでこの奥にある、考えたり気持ちを抑えたりする部分)が関わる力で、幼児期から少しずつ育ち、思春期にかけても成熟が続くことがわかっています。大人のように「走りたいけど、ここではやめておこう」とすぐには止まれないのは、ある意味で自然なことなんですね。
TERU何度言っても止まらないと、「私の言い方が悪いのかな…」と落ち込んでしまう方も多いんですが、それだけ子どもの「走りたい!」が強いということでもあります。笑
だからこそ、気持ちを抑え込むよりも、走らなくても済むような手を先に打っておくほうが、親も子もラクになりやすいと僕は感じています。
買い物の前にできること
① 事前に「ミッション」を決めておく

お店に行く目的がはっきりしていると、目の前の刺激に気を取られにくくなることがあります。そこでおすすめなのが、買い物の前に子どもの「ミッション(役割)」を決めておく方法です。
ミッションの例
- 食材探し担当定番ですが、「〇〇くんは、にんじんと牛乳を探す係をやってくれる?」と役割を渡すのは、やっぱり効果的なことが多いです
- 自分専用のエコバッグ担当小さなエコバッグを渡して、「これは〇〇ちゃんのバッグ。ここにパンを入れるのがお仕事だよ」と任せます。自分専用のものがあると、責任感も芽生えやすくなります
- カートを押す担当よくある方法ですが、とてもいい役割のひとつです。楽しくなってカートで暴走してしまうこともありますけどね。笑 勢いがつくと人にぶつかることもあるので、最初は親も持ち手に手を添えて一緒に押すと安心です。カートにぶら下がったり乗ったりして遊ぶのはやめておきましょう
- 買い物リストのチェック担当絵や文字で書いたリストを持ってもらい、カゴに入れたら印をつけてもらいます。5歳くらいの子は、まだ時間の見通しを立てるのが苦手なことが多く、「あとどれくらいで終わるのかわからない」不安が、落ち着きのなさにつながることもあります。「残りあと2つ!」が目で見えると、終わりまでの見通しを持ちやすくなります
いくつかの役割の中から、子ども自身に選んでもらうのもポイントです。「自分で決めた」という気持ち(自己決定感)があると、役割に意識が向きやすくなります。
② 体の状態を整えてから行く

走り回る日と、落ち着いて過ごせる日。その違いが、実は買い物の前の体の状態にあることも少なくありません。
- 行く前に体を動かしておくエネルギーが有り余っているときに、スーパーという限られた空間でおとなしく過ごすのは、大人が思う以上に難しいことです。公園で少し遊んでから行く、ひと駅分歩いてから行く、といった順番にするだけで変わることがあります
- 空腹と眠気を避けるお腹がすいていたり、眠かったりすると、大人でもイライラしやすく、我慢がききにくくなりますよね。子どもはなおさらだと思います。おにぎりを少し食べてから行く、お昼寝のあとに行く、などの工夫で、「お店の中は歩く」という約束を守りやすい状態をつくりやすくなります
買い物中にできること
③ 走りたくなったときの「代わりの行動」を決めておく

「走りたくなったら、その場でジャンプを3回してみようか!」のように、走りたい衝動を、別の安全な行動に置きかえておく方法です。
ほかにも「カートの持ち手をギュッと握る」「その場で10まで数える」など、いろいろな形が考えられます。お子さんにフィットするものが見つかれば、走りたい気持ちを別の行動で満たせることがあります。お店に入る前に、親子で一緒に決めておくのがおすすめです。
④ 線の上や同じ色のタイルだけを歩くゲーム

スーパーの床のタイルや、タイルとタイルの間の線を使って、「線からはみ出さないように歩けるかな?」「白いタイルだけ踏んで行けるかな?」と遊びにする方法です。夢中になってくれると、衝動的に走り出すのを抑えられることがあります。
線の上を歩くというミッションに意識が向くだけでなく、体の傾きや揺れ、スピードを感じる感覚(前庭感覚)と、自分の体の位置や動きを感じる感覚(固有感覚)を同時に使います。体を動かしたい欲求がほどよく満たされて、走り回るという大きな動きをしなくても済むことがあります。夢中になると前を見なくなりやすいので、混んでいるときは親がすぐ横についてあげてください。
⑤ お店の中で「探偵ゲーム」

「赤い野菜はどこかな?」「『と』がつくものを探そう!」など、目で探すゲームにする方法です。探すことに夢中になると、走ることから自然と意識がそれやすくなります。「見つけても走らずに、指さしで教えてね」と、始める前に決めておくと安心です。
色や文字に興味が出てきた子なら、遊びながら言葉の学びにもなります。見つけたら「トマト、あった!」と一緒に喜んであげてください。
⑥ 音や人ごみが苦手な子にはイヤーマフを試す

スーパーの騒音、館内放送、人のざわめきなどが苦手で、その不快感から走り出してしまう子もいます。
大きな音がすると耳をふさぐ、人が多い場所だと急に落ち着かなくなる、といった様子があれば、子ども用のイヤーマフを試してみるのもひとつの方法です。つけている間は周りの音が聞こえにくくなるので、駐車場などでは手をつないであげてください。空いている時間帯を選ぶだけで落ち着いて過ごせる子もいますし、お店によっては、館内放送や音楽を止める「クワイエットアワー」を設けているところもあります。
走っていないときの声かけが大切
⑦ 走ったときではなく、走っていないときに声をかける

大人はどうしても、子どもがよくない行動をしたときに注意する、という反応をしてしまいがちです。ところが子どもにとっては、注意されることも「注目してもらえた」という体験になって、その行動がかえって続いてしまうことがあります。
大人が注目した行動が増えやすいというのは、子どもの行動の大切な原理のひとつです。だからこそ、歩けているときに、ときどき声をかけてあげてください。
大人一緒に歩いてくれて、お母さん助かるよ!
大人今日はゆっくり歩けてるね。お兄さんみたいだね!
「走らないで!」より「お店の中は歩こうね」のように、してほしい行動のほうを言葉にするのもおすすめです。否定の言葉よりも、何をすればいいのかが子どもに伝わりやすくなります。
お店に行く前に、うまくいった日のことを思い出す会話をしておくのも、いい方法です。「そういえば、この前お店に行ったとき、ずっと歩いて過ごせたよね。お父さん、すごいなぁって思ったんだけど、あのときはどうして歩けたの?」と聞いてみてください。うまくいったときのことを親子で話しておくと、その日も「できる自分」をイメージしやすくなります。
TERU何かあったときより、何もないときに注目する。これは買い物の場面に限らず、子どもの行動全体に使える考え方です。
普段の関わりの中で「何もないときの注目」を増やす方法は、1日5分の「特別タイム」の記事で詳しく紹介しています。
普段の遊びでブレーキの力を育てる
⑧ 「ストップ&ゴー遊び」で止まる力を育てる

ここまでは買い物の前や買い物中の工夫でしたが、これは、子どもが自分でブレーキをかける力そのものを育てる方法です。
動いている状態から、合図で急に止まる遊びは、脳の「抑制機能」をたくさん使います。お店の外の遊びの中で「止まる!」をくり返しておくと、走りたい気持ちに自分でブレーキをかける練習になります。
ストップ&ゴー遊びの例
- だるまさんがころんだ
- 椅子取りゲーム
- フリーズダンス(音楽が流れている間は自由に踊り、音楽が止まった瞬間に氷のように固まる遊び)
- 信号ゲーム(「赤で止まる・青で歩く」の合図で動く遊び)
シンプルなストップ&ゴー遊びとは少し違いますが、「あべこべゲーム」もおすすめです。親が言ったことと反対の動きをする遊びで、「立って」と言われたら座る、「頭」と言われたらつま先をさわる、といった具合です。思わず言われたとおりに動きそうになるのを止めて(抑制)、反対は何かを考えて覚えておく(ワーキングメモリ)。前頭前野をたくさん使う遊びになります。
研究でわかっていること
オレゴン州立大学のシュミット博士、マクレランド博士らのチームは、アメリカの「ヘッドスタート」(低所得家庭向けの幼児教育)に通う3〜5歳の子ども276人を対象に、「赤信号・青信号」に似た、合図で動いたり止まったりするゲームなどを8週間(週2回、1回20〜30分)取り入れました。
その結果、ゲームに取り組んだグループの子どもは、気持ちや行動を自分でコントロールする力(自己調整)を測るテストで、取り組まなかったグループより高い成績を示しました。
ストップ&ゴー遊びのバリエーションは、4歳・5歳の癇癪についての記事でも紹介しています。
走ってしまったときの伝え方
どんなに工夫しても、走ってしまう日はあります。人やカートにぶつかりそうなとき、出入口や駐車場のほうへ向かっているときなど、危ない場面では、迷わず手をつなぐ・抱っこするなどして、まずは安全を守ってください。
そのうえで、少し落ち着いたら、「事実」と「親の気持ち」を伝えてみてください。僕がいつもおすすめしている方法です。
大人〇〇くんが走ったから、ぶつかりそうになった人がびっくりしてたよ。お父さん、ハラハラして困っちゃった
大人どうしたらいいと思う?
自分の行動が周りにどんな影響を与えたのかがわかると、子どもなりに考えることができます。そして、大好きなお母さんやお父さんが困っていると知ることは、子どもの心に響きやすいものです。そのあとで「どうしたらいいと思う?」と一緒に考えると、「歩く」「手をつなぐ」など、子ども自身の言葉で答えてくれることも多いです。
反対に、叱る言葉は使えば使うほど効き目が薄れやすく、親のイライラだけが増えていくこともあります。大きな声で叱ったときに子どもの脳で何が起きているのかは、子どもを怒鳴ると脳で何が起こるのかをまとめた記事で詳しく紹介しています。
親が頑張りすぎないために
走り回る時期は、ずっと続くわけではありません。体の使い方やブレーキの力が育つにつれて、少しずつ落ち着いていくことが多いです。
それまでの間は、「毎回うまくいかなくて当たり前」くらいの気持ちで大丈夫です。買い物の時間を短くする、空いている時間帯に行く、ネットスーパーや宅配を上手に使う、大人だけで行ける日をつくる。どれも立派な工夫です。
TERU8つ全部をやろうとしなくて大丈夫です。お子さんに合いそうなものを1つ選んで、次の買い物で試してみる。それだけでも十分だと思います。
うまくいかない日があっても、それで100点です。できる限り、できる範囲で。
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公式LINEを友だち追加するまとめ
今日のポイント
- 走り回る背景には、体を動かしたい気持ちや刺激の多さ、ブレーキの力がまだ育っている途中であることなどがある
- 買い物の前に、ミッションを決めて、体の状態を整えておく
- 買い物中は、代わりの行動・線の上を歩くゲーム・探偵ゲーム。音が苦手な子にはイヤーマフも
- 走ったときより、歩けているときに声をかける
- 普段のストップ&ゴー遊びで、止まる力を育てる
- 走ってしまったら、まず安全。そのあと事実と気持ちを伝えて、一緒に考える

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動画教室の詳細を見るよくある質問
スーパーで走り回るのは何歳くらいまで?
個人差がとても大きいのですが、ブレーキの力(抑制機能)は幼児期から少しずつ育っていくので、年齢とともに落ち着いていく子が多いです。年齢そのものより、「今日は歩けたね」という経験を一緒に喜んで、積み重ねていくことを大切にしてみてください。
走ったら、その場で叱ったほうがいい?
危ないときは、まず手をつなぐ・抱っこするなどして安全を守るのが先です。そのうえで、長く叱るより、「〇〇くんが走って、人がびっくりしてたよ。お母さん困っちゃった」と事実と気持ちを短く伝えて、「どうしたらいいと思う?」と一緒に考えるほうが、子どもには伝わりやすいです。
何度言っても走るのは、発達の特性が関係している?
走り回ること自体は幼児期にはよくあることで、それだけで発達の特性があるとは言えません。ただ、どこへ行っても危ないほど飛び出してしまう、ほかの場面でも困りごとが重なっている、など気になるときは、かかりつけの小児科や、お住まいの地域の保健センター、子育ての相談窓口などに相談してみてください。

この記事を書いた人TERU幼児教育講師/子育て勉強会TERU 代表
幼児教室で、たくさんの親子と関わってきた幼児教育講師。YouTube「子育て勉強会TERUch」(登録者 約13万人)で、子どもの発達や関わり方を研究の知見とあわせて発信しています。Yahoo!ニュース エキスパートとしても活動中。3〜8歳向けの「TERU先生の動画教室」や、オリジナルのひらがな・カタカナ教材も手がけています。
あわせて読みたい
参考文献
- Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology, 64, 135–168. DOI
- Schmitt, S. A., McClelland, M. M., Tominey, S. L., & Acock, A. C. (2015). Strengthening school readiness for Head Start children: Evaluation of a self-regulation intervention. Early Childhood Research Quarterly, 30, 20–31. DOI
※この記事は一般的な子育て情報としてまとめたものです。お子さんの心や体の状態で心配なことがあるときは、医師や専門機関にご相談ください。



